スキナモノガタリ

好きなものを書いていこう。そこで繋がれると嬉しいから。

ハコヅメは最新話と共にweb連載を追うべし!〜現代のweb連載を利用した超構造的伏線漫画〜

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ハコヅメと言えばゆるくてギャグ調の警察漫画だったり、最近では伏線すごいとか言われてたりですが、この漫画は常に進化を遂げているような漫画でして、現在のハコヅメの真骨頂はwebの後追い連載を利用した超構造的な話の組み方にあります。

どう言うことかと言うと、ハコヅメは講談社の漫画アプリ“コミックDAYS”にて、一年遅れの回と、一月遅れの回を無料連載しているのですが、この2つの回が最新話の伏線を含んでたりして話がリンクしてくるのです。

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現在ハコヅメは作者直々に『楽しいことは何もない』とされた重く苦しいエピソード、別章アンボックスを連載中ですが、今はこのアンボックスで主軸となるようなキャラやシーンが後追い連載でリンクされていて、初見時では軽いモブ描写程度で笑えた回だったはずが、アンボックスを知ってこの話を読むと全く心象が変わってくる、ギャグ回が笑えなくなってくるくらいの変化をもたらされます。

3月8日に公開された一年遅れの後追い連載 ギフテッド・モジャ(13巻収録)

現在無料公開中の一月遅れの後追い連載 別章アンボックス2話

これだけ見ると、よく出るキャラがこの時たまたま出たかのように思われるかもですが、このカップルは2回出番があったのみで、ギフテッド・モジャ以降アンボックスまで約1年間出番ありませんでした。そして初出の回(その107 牧高の受難)もアンボックスとリンクする形で後追い連載で無料公開されていました。

現在最新話は別章アンボックス6話となってますが、6話まで読むとまた印象の変化に深みが出ます。

またこれがこの一回だけではなく、こうして後追い連載が最新話にリンクしてくる事がちょくちょくあり、実は過去のエントリーでも触れてましたが、改めて主題として記事化しました。

 

今や色んな漫画がwebアプリやらで無料連載とか読み放題とか出てきて漫画が潤沢となってますが、最新話と無料回をリンクさせて過去回の印象を変えるほどの衝撃を与えるとか、web連載をこんな狂気に満ちた活かし方する作家さんは果たしてどれだけ居るのでしょうか。手塚治虫ですら嫉妬するんじゃないでしょうか。こんな時代に恵まれていたら僕がやっていたと。

しかしこの作者さん、警察で似顔絵描いてたくらいで漫画の嗜みはほぼないところから漫画を描き始められました。絵も話も漫画の上手さも上昇力エグいです。

もうね、前職警察官の体力や精神力、思考力、集中力、向上心と言ったパラメータや、計算高さや観察スキル、記録物スキルの活かし方、警察の閃き等全てを漫画に活かして活躍されてる気がして、異世界転生好きな人はみんなこのリアル転生者に注目するが良いよ!!

これだけのえげつない技巧を超絶ホワイトっぷりで週刊連載する漫画家

『ハコヅメ』描き下ろし特別編をプチ公開!! 作者・泰三子のインタビューも!! - コミックDAYS-編集部ブログ-

――では私生活に踏み込みます。一日のルーティーンを教えてください。

泰 午前6時頃から朝の準備をして、午前8時から午後5時まで仕事、それから子供を寝かしつける午後9時まで家事、ごはん、子供の宿題に付き合う等諸々します。午後10時からは、仕事したり睡眠をとったり自由に過ごしています。

 

――週刊連載ということで1週単位で締め切りが来ます。一週間のルーティーンはありますか?

泰 月曜日にネームと作画、火曜日に担当さんとの電話打ち合わせと作画、水~金で作画をします。土〜日曜日の2日間はお仕事お休みです。

 

――体調管理、健康維持のためにしていることはありますか?

泰 ランニングと半身浴を毎日30分ずつ。肩こりが良くなります。

そして漫画歴4年目にして小学館漫画賞も受賞。本当とんでもない人が現れたと思います。

 

とりあえずこの最新話を後追い連載にリンクさせる現代の漫画連載形式を活かし切ったスタイル、このゾクゾクは単行本では味わえません!皆、この漫画はリアタイで追いましょう!止まるところが見えず、また深化していくポテンシャルすら秘めています。

いつか映像化されたらそれはそれで、映像化エピソードと最新話リンクさせてきたりして…

 

現在電子書籍にて3巻まで無料です!

ハコヅメ非公式捜査資料、公開!

記事引越しました!↓

【毎週更新】ハコヅメ非公式捜査資料【毎巻更新】 - スキナモノガタリ

 

少し前に画像でちょい出ししたハコヅメの気になる各要素をまとめてたエクセルですが、少々ブラッシュアップして、最新話まで追えたので公開しようと思います。

 

ハコヅメは1話の中で様々な要素が絡み、やがて一つの大きな話として繋がっていきつつ同時に別の要素も撒かれていく複雑な作りをした漫画です。

そんな繋がりなど考えず、普通に読んでいても充分驚いたり面白く読める作品なのですが、どことどこが繋がってとか、あの話どこで出てきたっけとか気になる勢向けに、そういった要素の繋がりを私なりにまとめたものが今回のファイルとなります。

なので、ダウンロードしたファイルはそのまま参考にして頂いても良いですが、各々自由に編集して頂いて楽しんでもらってもOKです!

ただしあくまでディープなハコヅメファン向けで、ネタバレ容赦なしなので、未読の方、途中の方はご注意ください。

ファイルは本誌で最新話まで追ったものと、単行本までのものを用意させて頂きました。

 

ざっくり内容を言うと、先ず前回と同じく単行本と収録話数とそこに含まれる要素のマーカー、話数のリンクを示す話数表記があり

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右へスクロールすると軽く内容を知れる簡易メモ、マーカーでまとめられてない登場人物情報のメモ、建物地名等のメモ、あと時間の経過に関するメモなどがあります

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何より自分がハコヅメを楽しむために気になる要素を整理したくまとめたものですが、世のハコヅメファンの方々が楽しむのための助力となれば幸いです。

また、初めてこうして作ったものをクラウドを通して公開するので、一応のチェックはしたのですが、不具合がありましたらすみません。修正していきたいと思います。ご了承ください。

 

引越し先の記事にて引き続き公開していますm(_ _)m

 

こんな事しちゃうくらいには面白いハコヅメです。

もしこんなとこまで見てしまった未読の方が居ましたらぜひ!

歯に衣を着せない台詞回し、テンポの良さだけでも作者のセンスが光って面白いのですが、巻数が進むごとに絵も話作りもレベルアップしていき、止まる事なくぐいぐい引き込まれていく警察漫画です。

 

 

そこ掛けてくる!?ハコヅメ別章アンボックス導入の匂わせが半端なくヤバい

ヤバすぎて連日更新です。20日放置も当たり前なブログなのにヤバいですね。

ヤバすぎてハコヅメクラスタ間でもつい先日の小学館漫画賞受賞のおめでとうムードが一夜にして吹き飛ぶくらい暴風吹き荒れてましたw

ヤバいけどなるべくのネタバレにはならないよう配慮したいと思います。

って言うかネタバレ的なものはなくて、匂わせが半端なかったと言う話なので、新情報が出てくるような事はないですが、一切の情報仕入れたくない方は即時Go Back!でよろしくお願い致します。

 

ハコヅメは常々絵と話作りの上昇志向が半端ない漫画だと思ってますが、今回の要素の掛け方、本当何コレでしたw

最近のハコヅメと言えば私は昨年末頃暗示が明示がと騒ぎ立てていたのですが、ついにその最悪の裏切りに関する暗示、最後の晩餐(ハコヅメでのタイトルは最後の昼餐)の章へと向けて動き始めたのです。

そして今回はその導入の匂わせっぷりが半端ない!と言うお話です。

最後の晩餐に関するエントリーはこちら↓

その漫画は、暗雲立ち込める暗示を、光一閃と言わんばかりの明示で貫いた - スキナモノガタリ

 

と言うわけで改めまして、これより今回の半端ない匂わせをざっくり語りたいと思います。

先ず山田(男性警察官)とカナ(女性警察官)の語りで忌み数を意識させるくだりがあります

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カナは4とか9の忌み数ばかりだと…

そして山田が4人の写真を撮りました。

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この写真の仕上がりが

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これなんですけど、これって

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4巻表紙なんですよね。

じゃあハコヅメの表紙見てみると

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4巻と9巻しかカナ映ってません。忌み数!

15巻まで出てますが映ってないのでここでは割愛します。

そしてそんな流れで出てくる今回最終ページの全景がこちらになります。

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もう匂わせの暴力。

先ず副題「撮り直せない写真」ヤバいですね。

ファイルのタイトル「町山市における殺人・死体遺棄事件」ヤヴァイですね。

ハコヅメ番外編『アンボックス』へ…!?

アンボックスってアレですよ。

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ハコヅメの中枢を担う匂わせモノローグ入りの第1話タイトルですよ。

そして…次号モーニング予告ページ

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次号より読み飛ばせるよう「アンボックス」にタイトル変えての発進らしいです。

題材は殺人事件。楽しい事は何も出てこないと言う作者直々の何重にも渡るクッションの敷きっぷり。

今思えば最悪の裏切りを暗示した最後の昼餐もクッションだったんだなとわかります。

こんなに配慮してる漫画見た事ない(笑)

いやもう、時折ぶっ込んでくる辛い現場の描写でさえ、作者が現場を識ってる元本職という事でリアリティに飲まれ、身震いするような漫画だったんですが、これもう、本当覚悟決めるしかない話が来るんだなと思います。

10話後には日常回という事で、ここから9話、地獄への覚悟決めましょう。

にしても、小学館漫画賞受賞してすぐコレとか、タイミング凄い。持ってる人だなあw

 

ちなみに、忌み数と言えば13もありますよね。

13巻表紙はこちらです。

なんか黒いけどタロットの13まで掛けてないよねと、戦々恐々としております。

よく見ると墨汁も散ってますね。何でしょうね。

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小学館漫画賞受賞を記念して、2/2までコミックDAYSで26話まで無料とのことです!

よろしければぜひ!

ハコヅメ小学館漫画賞受賞おめでとう!!!とおまけ

嬉しいね、いや、嬉しいね!

無冠の帝王みたいに思ってたけどここに来てついに!

しかも講談社作品ながら小学館漫画賞受賞!

これは宇宙兄弟以来となります。

泰三子先生おめでとう!!!

青年誌で既刊15巻と聞くともう5、6年、やってそうな貫禄だけど僅か3年だからねw

そして忘れたわけでもなく、たまたま読んで下さってたのもでかいけどケンコバさん、えらい!

漫道コバヤシでの2018年もうドラマ化決まってるで賞と2019年の大賞の後押し、先見の明あったと思います!

3周年で15巻にして100万部という数字を見ましたがここから更に化けていくのかなと楽しみです。

ポテンシャル的にもっと上だと思ってるし、この作品を必要とする人はもっといると思ってるので…届いて欲しいです。

 

てなわけで、以下おまけです。

散々ハコヅメの構成の魅力、話の繋がりの面白さとか私以外の人も評価してたりするんですが、文章にしておきながらそれはなかなか伝わりにくい部分かなとも思いまして、パッとこの作品の綿密さが伝わるものがあれば良いかなと自分でエクセルにまとめでみました。

ネタバレといえばネタバレですが、見ただけじゃさっぱりわからないと思うので、本当に一切の情報を避けたい人以外は大丈夫かと思います。

と言うわけで、いちファンとして気になる要素まとめた感じこうなりました。

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もちろんこんな事しなくても、さらっと読んでて充分に楽しめる作品ですが、色んな要素を気になって考察してしまうとこう見えてくるみたいな、例です!

 

こうしてやってみて、ハコヅメで一番えぐいのはやっぱり、さりげなく投げかけられた伏線と、それを明かしてくるまでのスパンかなと思いました。

一本の長編の中でやるのが管理しやすいし普通なのですが、ハコヅメは色んな話の軸が絡められつつ進行していて、そんな中である日突然明かされるみたいな。

そのスパンがリアルに1年、2年経ってとかが多く、もう創作話と言うよりリアルな間で、だから先が気になると色んな話がそれぞれの軸で進行が気になってしまい、色分けしてみるとこんな事になってたりするんです(笑)

そして本当にさりげなく、普通の作品なら流されてそうな、そんなとこにそんな意味が!みたいなどんでん返し、内明かしが来るので絵や台詞の節々まで気になってしまうんですよね。

しかしこの綿密さ、本当街とか428とかの名作ADVか、はたまたオープンワールド系のゲームか!と思ってしまいますw

映像化されると映えそうですね。監督、構成作家、シナリオ担当の腕が問われますがw怖いながらも密かな楽しみの一つです。

 

繰り返しますがこう見ると複雑だけど、こんなとこまで考えなくても充分楽しめる作品だと思います!

そのバランスの妙も、魅力ですね。

 

晴れての小学館漫画賞受賞作品、オススメです♪

現在1/28まで全巻購入が20%オフのセール中のようです。

(今回の小学館漫画賞受賞でまた別のセールも組まれるかもです)

 

 

マジメに刺さるラブコメ漫画〜あそこではたらくムスブさん〜

ブコメと言うとラッキースケベをラッキーとも隠さず前面に押し出してくる昨今、

露出が少なく微塵もスケベさを出してこないどころか社会人でそんなヤツいねーよ!と側から殴られそうなピュア具合でただただ仕事に打ち込む真面目な研究職女子をコンドーム開発会社にミックスしちゃったシチュエーション…

 

刺さる!

 

物語は会社で見かけたヒロインに一目惚れした主人公が、ヒロインと同じ部署に異動してくるとこから始まります。

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と言うとこからずばり主人公は下心の塊なのですが、この主人公も好きな人に下手に手は出せない!と言うマジメで奥手なタイプで、色々とハメを外しすぎない妄想をし、葛藤しながらきちんと一線引きつつヒロインと接していきます。

 

つまりはラブコメのコメディ部分をラッキースケベやエロ描写ではなく、エロに繋がりそうな職場で、真面目な人間が恋をしながら葛藤する部分に掛けていて、二人の付き合い自体は純愛仕立てとなっています。

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試作品とはもちろんコンドームの事。このあくまで仕事な提案に他意はない!(重要)

 

潤滑ゼリー開発のくだりでうっかりセクハラ発言してしまう主人公。これも他意がないから焦る焦る(笑)

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下に通じる事を異性にやらしい意味でわざと聞いたり言わせたりみたいなのがなく、本当クリーンな恋路です。

 

そして結さんが可愛い

いつも研究熱心でクールな感じのヒロイン結さんですが、誰も居ないのを見計らっての息抜きを主人公に見られてしまってのこのくだり

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何もなかったていで誤魔化しにかかりますがこの続きも含めてめちゃめちゃ萌えました(笑)

 

そんな2人の話ですが、2巻終盤からの一夜の話が凄かった。

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残業からの終電が…から始まる一夜。お察しください。

何がすごいって、この一夜を一年掛けて描いてるw

一年と言うのは少々理由があって、作者のモリタイシさんが他にも連載を持たれていて、そっちが医療漫画で重たい漫画だから、こっちは緩めにと連載されてるので月一ながらページ数も少なめ、と言う形で描かれていて、発刊速度も年一と言う超スローペースなのだと思いますが、その分話を丁寧に紡がれていて面白さに繋がっているのかなと感じました。

今時の社会人ラブコメでですよ、リアルに一年掛けて描いた一夜で、どんな進展したかってもう、、、

流石に言えませんが3巻最高でした!ごちそうさまでした!

 

また本筋ではないのですが、コンドーム開発においてはきちんと実際の会社が協力についていて、職業漫画的な側面も有しています。

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自分がギャップに弱いのは重々承知してるけど、このド直球そうな舞台であえて純愛のラブコメ、本当良かったです。既刊3巻だし何かの合間に適当に読んで行こうと思ってたのにうっかり一気読みしてしまい無事死亡しました。

ハコヅメの流れで漫道コバヤシの賞を気にするようになったけど、甘ずっぱいで賞2年連続受賞してる『君は放課後インソムニア』と戦わせたいね。刺客として送り込みたいね、ケンコバさんに。無理だけど。

 

興味の湧いた方はどうぞお納めください。

 






年の瀬に今一度ハコヅメを語ろう〜ハコヅメガタリ2020〜

2020年、人類にとって大きな転換を迎えたコロナの年。

ですが私にとっては、ハコヅメの年となりました。

今では毎週楽しんでいるハコヅメを改めて振り返りたいと思います。

1月、職業漫画を読みたいと思い立ち面白そうな漫画を探していたところ、『某県警に10年勤めた元警察官が描く警察漫画』と言う触れ込みが目に留まりました。

普段相対すると緊張するばかりで、その内情はとても気さくに知れるようなものではなく、接点はない、と言うか人生においてないに越したことはないような職業警察官。それを知れるのは面白そうだなと思いました。

また警察官が描いてるとはいえ評価はどんなものだろうと軽く調べると、様々な警察官から警察あるあるだと言った感想が転がっていて、『これは買い』だと全巻購入(当時10巻)に踏み切りました。

 

実際に読んでみると結構ギャグ主体で登場人物がコントを繰り広げていて読み易く、また独特な切り口のパワーワードが面白く、小気味良いテンポで話を展開させつつ明け透けに警察の内情が描かれていたり、新人川合に仕事を教えると言うていできちんと職業漫画もしていたり、警察漫画と言う事で覚悟はしていたけど凄惨な事件もたまに差し込まれ、普段の回との温度差で風邪もひけると、期待していた職業漫画としてこの時点で大変満足していました。

ですが当時最終巻だった10巻、それまで単話で完結していたハコヅメに、唐突に不穏なコマが差し込まれます。第一話冒頭で出てきた、普通なら忘れ去られた初期設定と思えるシーンを覆してきました。

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この辺りから、ハコヅメは単話完結の職業漫画から進化しました。

それまでは話が連続した長編であってもタイトルを引っ張ることはなく、内容も単話完結だったのですが、この長編はそれまでの巻で収録されていた描写の断片が実は伏線だったと言うように、一つの話として繋がりを持って動き始めたのです。

そしてその話がちゃっかり続きが気になる面白さでありながら11巻では途中で終わると言う小憎らしさ!いても立ってもいられず、コミックDAYSの最新刊の続き読めます戦略にずぶりとハマって行ったのでした。(公認の切り抜き機能もあり、現在はDモーニングで追ってます)

 

初の長編タイトル、『同期の桜』編を読み終えて、ハコヅメという漫画に関して深く理解した事が一つありました。

それは、同期の桜ではこれからカーチェイスが!凶悪な犯人を捕まえるぞ!ヒートアップした逮捕劇が始まるぞ!みたいなよくある警察作品的な展開で、それがほぼ描かれませんでした。代わりにピックアップされたのは警察署に残った副署長で、副署長の語りが終わる頃に逮捕されていると言う展開から、ハコヅメはよくある警察エンターテイメントではなく、あくまで警察官として働く人々のヒューマンドラマだと言うことを前面に出し、一線を引いた事です。

思い返せばそれまでも逮捕劇を焦点として描かれることはほぼなく、描かれるのは取調べとか聞き取りとか、警察の対応のシーンで、多くの警察作品において普段は話の過程でカタルシスへの一装置として描かれる程度の箇所に力を注ぎ、被害者と相対した場合の心持ちだとか普通聞かれたくないような内容まで突っ込んで聞くことの意義だとか、普段ギャグやったり漫才コントしながら、職務上本当に大事な箇所をきっちり押さえて来たと思います。

こうして、ハコヅメは作者が元警察官として伝えたいことがあって描いてる職業漫画であって、逮捕劇のエンタメ性は他所に任せた!と言わんばかりのはっきりしたスタンスとその完成度がより気に入ったのでした。

 

そしてこの同期の桜編以降、ハコヅメはそれまでの巻で散りばめた話の断片を、ちょくちょく最新話で繋いで来るようになりました。1巻収録でもギャグだった台詞でも、単話完結だと思っていた話の様々な箇所が紡がれるようになり、モブだと思っていたキャラが名前や物語を明かし始め、しかし話が収束するわけでもなく、むしろ新キャラも話の広がりもバンバン見せてくるし、色んなキャラの話が同時進行していて『ああ、これ、こっちの話は風呂敷畳みながらこっちでは伏線撒いてるな』みたいな、それまでのギャグ主体や小気味の良い話の展開や職業漫画的要素も維持しつつ新たに超構造的な伏線漫画をこなし始め、長く信じていた台詞のどんでん返しもあり、先が気になるとどのコマも油断ならないみたいな漫画に変貌しました。

これにより前に見たセリフの重みや意味合いが変わったりと、読み返すのも面白く、また先が気になるものの作者もミスリードを混ぜてくるので、考察も大変捗るようになりました。

最初の職業漫画の時点で満足していたんですが、何かもう突き抜けた気がします。このいくつもの要素の同時進行ぶりは428と言う名作ゲームを彷彿とさせてくれますし、今では警察漫画と言うより、一つの技巧派漫画としてオススメしたい気持ちでいっぱいです。

また、これだけ繋がりを持たせ始めてもたまに読み切りのような、他の回や登場人物を全く知らなくても楽しめる回も差し込んだりしていて、その回内でもしっかり伏線撒いてテンポよく展開して回収してと言う魅力を詰め込んでたりで、処女作にして転職した新人漫画家とは思えない力量をどんどん見せつけられている気がします。

少なくとも最初の元警察官と言う肩書きよりは、この複雑多岐な作品を成り立たせているのはもはや知能犯という方がしっくりくると思えるようになってしまいました。警察官ネタの引き出しも、今現在17巻相当だと思いますが変わらず底知れないし、寧ろ画力が上がって描ける話が増えて伸び伸び描かれてる感じがします。

 

今回タイトルでハコヅメガタリ2020としましたが、絵も話も急成長するこの作品、1年後にはまた別の顔になってるかもしれません。しかし来年も語ってると思います。そんなとこから2020と入れさせて頂きました。本誌の方では普通は怖くて投げれないようなとんでもない球を全力投球されましたし、今後も非常に楽しみな作品です。

 2年以上前、作品が進化してくる前からドラマ化が囁かれるレベルの実写化向き作品なので、2021年はもしかしたらそんな話も出てきて、より多くの人に発見される年になるかもしれませんね。

この複雑に絡んだ細切れエピソードを映像化向けにどう再構成するか、監督と脚本家の腕に全てかかってると思いますが、そんな話が出たらまた楽しみにして動向を見たいと思います。

 

 と言うことで、今年ハコヅメにどハマりした私は一つの罪をここに自白します。

名のある漫画賞にスルーされ続けるも評価爆上がりの漫画『ハコヅメ』

https://anond.hatelabo.jp/20200417114606

こちらの増田は私です。

こうしてブログは持ってますがいつも片隅で泣かず飛ばずなもので、増田とかの方が目につくのです。先ず更新頻度を上げろって話ですけどね。

にしても多くの人の目に止まれとなりふり構わないタイトル付けてて悪いですね。

何でこれが受賞してないんだーってとこから書いたので、こうなったと言うのもありますが、すみませんでした!

ただここで書き込んだ内容で面白いデータもあって、

2020年4月17日時点、Amazonで一巻が138の評価数、星平均は4.4。

その後は評価数は次第に落ち着いていき30〜40代の評価数になるも星平均は落ちず高評価をキープ。

そして9巻から叙々に評価数が上がり、現在最新刊11巻では1巻以来の評価数3桁入り(101)、星平均は4.9。

この8ヶ月前のデータを更新してみると

2020年12月31日時点、Amazonで一巻が424の評価数、星平均は4.4。

その後新たに期間限定無料巻に加わった3巻まで評価数250以上、星4.5以上で、以降も評価数160以上で高評価をキープ。

そして10巻から再び評価数200以上で軒並み高い評価を受け、最高評価は14巻、評価数351で星4.8。既刊15巻。

全体的に約3倍とえらい伸びを感じます。

えらい伸びだけど15巻にして100万部…!平均すると約7万部…不条理を感じますw

講談社の回し者じゃないですが、もっと売れてても良いと思う!

これは多分評判の波は立ってるけどその広がりを上回るペースの発刊速度の為せる技でもあるかなと。大体2ヶ月で一冊発刊のハイペースで、これも元警察官の体力とメンタルがあってのことだと思いますが、本当きっちりされてて仕事が早いのです。

この辺の仕事ぶりは3周年記念インタビューから一部引用しますが

https://comic-days.com/blog/entry/hakodume_3th (全文もオススメです)

――ほぼ休載なしで3年間連載を続けています。これはけっこうすごいことなのですが、なぜお休みを取らないのでしょうか?

泰 連載開始の頃は産後間もなかったこともあり、熟睡しないように半年ほど布団での睡眠を禁止して仕事していましたが、今では作業進行を計画的に進めることで、休載なしでも休養は充分とれるようになりました。休載しない一番の理由は、新人さんの代原を載せたくないからです。『ハコヅメ』は代原から連載にしていただいたので。新人さんの代原を見るのが怖くて仕方ないです。

 

――では私生活に踏み込みます。一日のルーティーンを教えてください。

泰 午前6時頃から朝の準備をして、午前8時から午後5時まで仕事、それから子供を寝かしつける午後9時まで家事、ごはん、子供の宿題に付き合う等諸々します。午後10時からは、仕事したり睡眠をとったり自由に過ごしています。

 

――週刊連載ということで1週単位で締め切りが来ます。一週間のルーティーンはありますか?

泰 月曜日にネームと作画、火曜日に担当さんとの電話打ち合わせと作画、水~金で作画をします。土〜日曜日の2日間はお仕事お休みです。

 

――体調管理、健康維持のためにしていることはありますか?

泰 ランニングと半身浴を毎日30分ずつ。肩こりが良くなります。

本当、どんな新人漫画家だよ(笑)

そしてこの年末には本誌が休刊ながらいつも通り仕事してしまったので休載ならぬ過載と言うオチが付いたのでした。

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もうハコヅメも大好きですが、作者が作者として大好きですね。

多分警察漫画じゃなくても面白い漫画描けると思う。今年はシキブアイラブユーもありましたね。

こんな作者さんの作品を、社会現象とまでは言わずとも、必要な人の目に届き、私のように日々の楽しみになっていけば良いなと思い、今後も推していきたいと思います。

いつもの如く駄文ながらここまで読んでくださりありがとうございました。

それでは皆様良いお年を!

  

自白ついでにもう一つ白状すると、ハコヅメの毎週の考察などはこちらのツイートで追ってます。

興味ある方はフォローお願いします。宜しければ一緒に考察していきましょう!

https://www.twitter.com/origaminote

 

いつまでかわかりませんが、電子書籍版が現在3巻まで無料という事で置いておきます。

こんな記事ですが興味が湧きましたら是非。

 




 

多くの人に読んで欲しいハコヅメの性被害回

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この如月と言うキャラは初登場時ただのイケメンの先輩として登場しました。

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そこからリアルに1年以上、ハコヅメの面白おかしな日常の過ごしの中で伏線を紡ぎ、この回で一つの真相と心の内を明かすに至りました。

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そんな回が2週間の無料期間に入ったので、是非。 

 

以下は私の御託です。

私はこれを読むまで、性被害と言うと人を傷つける行為としていけない事だと、ただこの世のルールとして当たり前にわかっているつもりでした。

性被害を描いた漫画等作品も沢山ありますし、読んで来ました。

ただどれも性被害をピンポイントで語る事で、ただその時の辛さが語られることで、わかっていたようで、その重さをわかっていなかったのではないかと、この回を読んで思いました。

ハコヅメでもメインテーマの一つなんだろうと思うほど性犯罪の話は出てきますが、どれもほぼ単一の事件として描かれたものでした。

しかし今回、こうしてじっくりと性被害者が普段どう過ごしてるか、外から見れば割と普通に過ごしている姿を描き、キャラにも愛着が湧いたところで「性犯罪の被害者は被害内容を話さないか小さく話す」を体現した、実はこんな思いで日々過ごしていたと言う描写は、とにかくずっしりと刺さりました。

初めてこれで、僅かばかりでも性被害の重みを知れたのだと思います。

今では皆こんな夜を、自己嫌悪を抱えて生きているのかなと、性犯罪を見れば想像するようになりました。

その痛みは、決して負わせてはいけないものだなと心より思えるようになりました。

 

描いて下さった作者に感謝を。

そして、如月部長に救いがありますように。

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