スキナモノガタリ

好きなものを書いていこう。そこで繋がれると嬉しいから。

年の瀬に今一度ハコヅメを語ろう〜ハコヅメガタリ2020〜

2020年、人類にとって大きな転換を迎えたコロナの年。

ですが私にとっては、ハコヅメの年となりました。

今では毎週楽しんでいるハコヅメを改めて振り返りたいと思います。

1月、職業漫画を読みたいと思い立ち面白そうな漫画を探していたところ、『某県警に10年勤めた元警察官が描く警察漫画』と言う触れ込みが目に留まりました。

普段相対すると緊張するばかりで、その内情はとても気さくに知れるようなものではなく、接点はない、と言うか人生においてないに越したことはないような職業警察官。それを知れるのは面白そうだなと思いました。

また警察官が描いてるとはいえ評価はどんなものだろうと軽く調べると、様々な警察官から警察あるあるだと言った感想が転がっていて、『これは買い』だと全巻購入(当時10巻)に踏み切りました。

 

実際に読んでみると結構ギャグ主体で登場人物がコントを繰り広げていて読み易く、また独特な切り口のパワーワードが面白く、小気味良いテンポで話を展開させつつ明け透けに警察の内情が描かれていたり、新人川合に仕事を教えると言うていできちんと職業漫画もしていたり、警察漫画と言う事で覚悟はしていたけど凄惨な事件もたまに差し込まれ、普段の回との温度差で風邪もひけると、期待していた職業漫画としてこの時点で大変満足していました。

ですが当時最終巻だった10巻、それまで単話で完結していたハコヅメに、唐突に不穏なコマが差し込まれます。第一話冒頭で出てきた、普通なら忘れ去られた初期設定と思えるシーンを覆してきました。

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この辺りから、ハコヅメは単話完結の職業漫画から進化しました。

それまでは話が連続した長編であってもタイトルを引っ張ることはなく、内容も単話完結だったのですが、この長編はそれまでの巻で収録されていた描写の断片が実は伏線だったと言うように、一つの話として繋がりを持って動き始めたのです。

そしてその話がちゃっかり続きが気になる面白さでありながら11巻では途中で終わると言う小憎らしさ!いても立ってもいられず、コミックDAYSの最新刊の続き読めます戦略にずぶりとハマって行ったのでした。(公認の切り抜き機能もあり、現在はDモーニングで追ってます)

 

初の長編タイトル、『同期の桜』編を読み終えて、ハコヅメという漫画に関して深く理解した事が一つありました。

それは、同期の桜ではこれからカーチェイスが!凶悪な犯人を捕まえるぞ!ヒートアップした逮捕劇が始まるぞ!みたいなよくある警察作品的な展開で、それがほぼ描かれませんでした。代わりにピックアップされたのは警察署に残った副署長で、副署長の語りが終わる頃に逮捕されていると言う展開から、ハコヅメはよくある警察エンターテイメントではなく、あくまで警察官として働く人々のヒューマンドラマだと言うことを前面に出し、一線を引いた事です。

思い返せばそれまでも逮捕劇を焦点として描かれることはほぼなく、描かれるのは取調べとか聞き取りとか、警察の対応のシーンで、多くの警察作品において普段は話の過程でカタルシスへの一装置として描かれる程度の箇所に力を注ぎ、被害者と相対した場合の心持ちだとか普通聞かれたくないような内容まで突っ込んで聞くことの意義だとか、普段ギャグやったり漫才コントしながら、職務上本当に大事な箇所をきっちり押さえて来たと思います。

こうして、ハコヅメは作者が元警察官として伝えたいことがあって描いてる職業漫画であって、逮捕劇のエンタメ性は他所に任せた!と言わんばかりのはっきりしたスタンスとその完成度がより気に入ったのでした。

 

そしてこの同期の桜編以降、ハコヅメはそれまでの巻で散りばめた話の断片を、ちょくちょく最新話で繋いで来るようになりました。1巻収録でもギャグだった台詞でも、単話完結だと思っていた話の様々な箇所が紡がれるようになり、モブだと思っていたキャラが名前や物語を明かし始め、しかし話が収束するわけでもなく、むしろ新キャラも話の広がりもバンバン見せてくるし、色んなキャラの話が同時進行していて『ああ、これ、こっちの話は風呂敷畳みながらこっちでは伏線撒いてるな』みたいな、それまでのギャグ主体や小気味の良い話の展開や職業漫画的要素も維持しつつ新たに超構造的な伏線漫画をこなし始め、長く信じていた台詞のどんでん返しもあり、先が気になるとどのコマも油断ならないみたいな漫画に変貌しました。

これにより前に見たセリフの重みや意味合いが変わったりと、読み返すのも面白く、また先が気になるものの作者もミスリードを混ぜてくるので、考察も大変捗るようになりました。

最初の職業漫画の時点で満足していたんですが、何かもう突き抜けた気がします。このいくつもの要素の同時進行ぶりは428と言う名作ゲームを彷彿とさせてくれますし、今では警察漫画と言うより、一つの技巧派漫画としてオススメしたい気持ちでいっぱいです。

また、これだけ繋がりを持たせ始めてもたまに読み切りのような、他の回や登場人物を全く知らなくても楽しめる回も差し込んだりしていて、その回内でもしっかり伏線撒いてテンポよく展開して回収してと言う魅力を詰め込んでたりで、処女作にして転職した新人漫画家とは思えない力量をどんどん見せつけられている気がします。

少なくとも最初の元警察官と言う肩書きよりは、この複雑多岐な作品を成り立たせているのはもはや知能犯という方がしっくりくると思えるようになってしまいました。警察官ネタの引き出しも、今現在17巻相当だと思いますが変わらず底知れないし、寧ろ画力が上がって描ける話が増えて伸び伸び描かれてる感じがします。

 

今回タイトルでハコヅメガタリ2020としましたが、絵も話も急成長するこの作品、1年後にはまた別の顔になってるかもしれません。しかし来年も語ってると思います。そんなとこから2020と入れさせて頂きました。本誌の方では普通は怖くて投げれないようなとんでもない球を全力投球されましたし、今後も非常に楽しみな作品です。

 2年以上前、作品が進化してくる前からドラマ化が囁かれるレベルの実写化向き作品なので、2021年はもしかしたらそんな話も出てきて、より多くの人に発見される年になるかもしれませんね。

この複雑に絡んだ細切れエピソードを映像化向けにどう再構成するか、監督と脚本家の腕に全てかかってると思いますが、そんな話が出たらまた楽しみにして動向を見たいと思います。

 

 と言うことで、今年ハコヅメにどハマりした私は一つの罪をここに自白します。

名のある漫画賞にスルーされ続けるも評価爆上がりの漫画『ハコヅメ』

https://anond.hatelabo.jp/20200417114606

こちらの増田は私です。

こうしてブログは持ってますがいつも片隅で泣かず飛ばずなもので、増田とかの方が目につくのです。先ず更新頻度を上げろって話ですけどね。

にしても多くの人の目に止まれとなりふり構わないタイトル付けてて悪いですね。

何でこれが受賞してないんだーってとこから書いたので、こうなったと言うのもありますが、すみませんでした!

ただここで書き込んだ内容で面白いデータもあって、

2020年4月17日時点、Amazonで一巻が138の評価数、星平均は4.4。

その後は評価数は次第に落ち着いていき30〜40代の評価数になるも星平均は落ちず高評価をキープ。

そして9巻から叙々に評価数が上がり、現在最新刊11巻では1巻以来の評価数3桁入り(101)、星平均は4.9。

この8ヶ月前のデータを更新してみると

2020年12月31日時点、Amazonで一巻が424の評価数、星平均は4.4。

その後新たに期間限定無料巻に加わった3巻まで評価数250以上、星4.5以上で、以降も評価数160以上で高評価をキープ。

そして10巻から再び評価数200以上で軒並み高い評価を受け、最高評価は14巻、評価数351で星4.8。既刊15巻。

全体的に約3倍とえらい伸びを感じます。

えらい伸びだけど15巻にして100万部…!平均すると約7万部…不条理を感じますw

講談社の回し者じゃないですが、もっと売れてても良いと思う!

これは多分評判の波は立ってるけどその広がりを上回るペースの発刊速度の為せる技でもあるかなと。大体2ヶ月で一冊発刊のハイペースで、これも元警察官の体力とメンタルがあってのことだと思いますが、本当きっちりされてて仕事が早いのです。

この辺の仕事ぶりは3周年記念インタビューから一部引用しますが

https://comic-days.com/blog/entry/hakodume_3th (全文もオススメです)

――ほぼ休載なしで3年間連載を続けています。これはけっこうすごいことなのですが、なぜお休みを取らないのでしょうか?

泰 連載開始の頃は産後間もなかったこともあり、熟睡しないように半年ほど布団での睡眠を禁止して仕事していましたが、今では作業進行を計画的に進めることで、休載なしでも休養は充分とれるようになりました。休載しない一番の理由は、新人さんの代原を載せたくないからです。『ハコヅメ』は代原から連載にしていただいたので。新人さんの代原を見るのが怖くて仕方ないです。

 

――では私生活に踏み込みます。一日のルーティーンを教えてください。

泰 午前6時頃から朝の準備をして、午前8時から午後5時まで仕事、それから子供を寝かしつける午後9時まで家事、ごはん、子供の宿題に付き合う等諸々します。午後10時からは、仕事したり睡眠をとったり自由に過ごしています。

 

――週刊連載ということで1週単位で締め切りが来ます。一週間のルーティーンはありますか?

泰 月曜日にネームと作画、火曜日に担当さんとの電話打ち合わせと作画、水~金で作画をします。土〜日曜日の2日間はお仕事お休みです。

 

――体調管理、健康維持のためにしていることはありますか?

泰 ランニングと半身浴を毎日30分ずつ。肩こりが良くなります。

本当、どんな新人漫画家だよ(笑)

そしてこの年末には本誌が休刊ながらいつも通り仕事してしまったので休載ならぬ過載と言うオチが付いたのでした。

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もうハコヅメも大好きですが、作者が作者として大好きですね。

多分警察漫画じゃなくても面白い漫画描けると思う。今年はシキブアイラブユーもありましたね。

こんな作者さんの作品を、社会現象とまでは言わずとも、必要な人の目に届き、私のように日々の楽しみになっていけば良いなと思い、今後も推していきたいと思います。

いつもの如く駄文ながらここまで読んでくださりありがとうございました。

それでは皆様良いお年を!

  

自白ついでにもう一つ白状すると、ハコヅメの毎週の考察などはこちらのツイートで追ってます。

興味ある方はフォローお願いします。宜しければ一緒に考察していきましょう!

https://www.twitter.com/origaminote

 

いつまでかわかりませんが、電子書籍版が現在3巻まで無料という事で置いておきます。

こんな記事ですが興味が湧きましたら是非。